2011年6月13日第6回Project One を渋谷Café Laxで開催しました。
ゲストスピーカーはスキーモーグル全日本女子デュアル・チャンピオンの水谷夏女さん。
水谷さんは現在サミーにスポンサードされて世界大会を転戦。2014年ソチオリンピックを目指して日々トレーニングに励んでいます。
今回の講演ではモーグルの魅力から、モーグルを始めたきっかけ、フィジカル・メンタルトレーニングの方法やソチオリンピックに掛ける思いなど話してもらいました。
<モーグルについて>
モーグルスキーはコブ(凹凸)の深い斜面を滑り降り、ターン技術、エア演技、スピードを競うスキーのフリースタイル競技の1つ。
あんなに飛べるんだとか、あんなに早く滑れるんだ、かっこいいと思ってもらってなんぼ。モーグルは魅せてナンボのスポーツなので、かっこい~と言われるのが快感・原点なのだそうです。
30秒の間にきれいに滑って、高く飛んで、早く滑る。この3つのことをパーツパーツに気をとられると次の動きに響いて全体のバランスがガタガタになってしまう
。パーツパーツを100%にするのではなく、上から下までの全ての流れを意識して滑ることが大事なのだそうです。
ジャッジ点数で50%の比率があるターン点に比重をおくのが一般的な考え方だけど、高く飛ぶことが大好きで我こそは高くかっこよく飛ぶという選手ばかりだそうです。高く飛ぶとその分スピードロスになるんだけど、その分速く滑ればいいじゃないかという考え方をするらしい。イイですね。
<モーグルを始めたきっかけ>
小学校の時にリレハンメルオリンピックで18歳の里谷多英選手の活躍を見て、「18歳の若い女子がこんなに活躍できるんだったらきっと私にも出来るんじゃないか」って思い、モーグル選手になるって決めた。その4年後の長野オリンピックで里谷選手が金メダルを取ったのを見て、「私もオリンピックで金メダルを取る」って思って親に相談。
親からは小さい頃からモーグルやったら身長が伸びないと言われ、モーグルを将来やるためにその基礎となるアルペンスキーを中学3年まで本気でやると決めた。
いつかモーグルに転向するって決めて、目標を達成したらアルペンを卒業すると決め、ジュニアオリンピック入賞を目標に置いた。中学3年で見事入賞し、高校1年からモーグルに転向。モーグル2年目で全日本選手権準優勝。ジュニアオリンピックで優勝。ナショナルチーム入りを果たす。
毎回Project Oneでゲストの話を聞いて思うのですが、
ある事を極めている人って小さい時から、これをやりたいとかこうなりたいっていう気持ちが強いですね。水谷選手も小学校の時からオリンピックで金メダルを取りたいと思って、その気持ちが今でも続いていて、その為にずっとずっとがんばってきてるんですね。
やるって決めたものは出来るようになるまでついついやってしまう。好きだったら執着心と忍耐力を持ってやるって質問タイムの時に答えていたけど、トップアスリートの人は皆必ずと言って良いほど出来る様になるまでやるって人ばかりなのですが、だから人より出来るんですよね。当たり前か。
<苦労話もありました>
国内ワールドカップにデビューした翌年ジャンプで肩から落ちて脱臼。何度もギブスを外して大会に出ては脱臼を繰り返し結局手術をする羽目に。
恐怖心が芽生えジャンプが出来なくなる。トラウマというやつですね。スタート台に立ったときに、また失敗するんじゃないかと思ってしまう。完走も出来なくなってしまい、ナショナルチームからも外されてしまう。引退を決意するも、友達から逃げていいのかと言われ、このままじゃ行けないと思い復帰。色々吹っ切れてエアも飛べる様になり全日本3位に返り咲きナショナルチームにも復帰。
カザフスタンで開催されたアジア大会代表に選出されて出場。日本の国旗と五輪マークが入っているスーツとスーツケース、そして自分の名前が刺繍されているユニフォームも手に入れて選手村に到着。スタート前日にスタートリストが張り出されるのだが、なぜか自分の名前だけない。一番偉い人に呼ばれて、「本当に申し訳ないけど、ミスでエントリーが出来ていなかった」と言われた。頭が真っ白で放心状態になった。応援してくれていた人たち、スポンサーの人たち、関係者の人をがっかりさせてしまうというそんな辛い経験もした。
<メンタルトレーニング:未来日記>
「今があって将来こうなりたいという目標設定」ではなくて、「先に自分が行き着きたいゴールを決めてから今何をしなければいけないか決める」やり方をしている。
人間はどうしても知らず知らずの内に自分の周りの環境やレベルに合わせてしまう傾向があるので、未来日記を書くようにしている。これは、明日以降の行動を書き示すもので、トレーニングの仕方や何の課題を改善するためのものなのかなど具体的に書いていき、そしてそれがどの様に出来たのかという未来を書いていく。そうすると未来の自分は周りに流されずに自ずとそこに自分を持っていこうとするのだそうです。
そして、ホめホめワード。
「今日も成長した。明日も必ず成長する。」という趣旨の言葉も未来日記に書いていく。これを365日続けることで自信にも繋がる。アスリートは自信が何よりの武器だけど、歳をとると誰も褒めてくれなくなるので、自分で自分を褒める。
<メンタルトレーニング:良かった時のこと>
あれが悪かったからもう少し改善しようとか工夫しようとか、
悪かったことを直すよりも、良かった時のこと・感覚・イメージを忘れないことの方が大事。(勿論悪い点を直すことも大事だけど)
その時に自分が思っていたイメージはどんなものだったか。そのイメージを持つことでどの様な行動に出れたのかという一連の動作を忘れないことが大事。
自分のあら捜しはネガティブのスパイラルにハマってしまうし、毎回毎回自分のあら捜しをしていてもしょうがないし、きりがない。
選手の中には全て記憶に残している人もいる。いつ何を考え何をしてどう行動してたか思い出せる。試合の時の緊張も、この緊張感は何月何日のものと同じで、筋肉のこわばり方やその感情がいつの時のものと同じと分かる。だから同じ緊張感がきたときの対処の仕方も再現が出来る。
良かった時のことを忘れずにいるということこそが、一番伸びていくポジティブなスパイラル。
自分的にはこの話が一番心に刺さりましたね。やはりどうしても自分の悪いところばかりを改善しようとしていて、良かった時のことってあまり突き詰めて掘り下げていないことが多い。スポーツでも仕事でもやはり「良いところを伸ばす」というのが鉄則なのでしょうかね。これは自分の中にも取り入れて行きたいものですね。
ということであっという間に講演の時間が過ぎてしまいました。
今回も色々な業界の方が35人程参加してくれましたが、
講演のあとの懇親会も大盛り上がりで楽しく充実した時間でした。二次会も朝まで。。。
参加頂いた皆さん、有難うございました。この場で得られた刺激、得られた交流を仕事や趣味・遊びなどに生かしてもらえたらと思います。